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新型コロナでクリニックの診療が一変

オンライン診療、「非対面」の意外なメリットと課題

新型コロナウイルス感染拡大で注目が高まっているオンライン診療。時限的・特例的な対応ではあるが、疾患を問わず初診でも適用され、医療従事者と患者の感染リスクを下げる有効な手段であることが分かった。とはいえ、オンライン診療を実施している医療機関はまだ少ない。クリニックにとってのメリットと課題は何か。LINEのビデオ通話でオンライン診療を行っているMIZENクリニック豊洲(東京都)の田澤雄基院長に聞いた。

※本インタビューは2020年6月5日に行い、その時点までの状況を基にまとめたものです。

MIZENクリニック豊洲 院長
田澤 雄基(たざわ・ゆうき)氏
2014年、慶應義塾大学医学部卒業。医学部生時代に医療IT系ベンチャーを起業し、東証一部上場企業に売却。卒業後は研修医を経て、慶應義塾大学医学部精神・神経科に入局。その後、同大学院に入学し、人工知能(AI)やIoTを活用した精神疾患の定量的診断研究およびその事業化を行っている。また、同医学部の産学連携プロジェクトのメンバーを兼務し、慶應医学部健康医療ベンチャー大賞を設け、実行委員長を務める。
大学外では夜18~22時に診療する予防専門のMIZENクリニックを豊洲と市ヶ谷に開き、働く人のための夜間診療を行う。産業医として大手企業をはじめ20社以上の顧問を務める。

この記事のポイント

  • オンライン診療は、医療従事者と患者の双方にとって感染拡大防止に有用
  • 専用システムか、汎用サービスか、診療環境に応じて選択
  • 感染時と平時を分けた議論と、適切・不適切な事例の明確化が普及のカギ

発熱あり・なしによる診療時間帯の分離が容易に

――新型コロナウイルスが感染拡大した時、先生の病院はどのような状況でしたか。

 国内の新規感染者数が増え始めた3月下旬から、発熱で来院する患者さんが急に増えました。医師もスタッフも、いつ感染してもおかしくない状態になり、スタッフにとっては、非常にストレスの高い状態でもありました。

 当院をかかりつけにしてくれている患者さんには電話で再診の対応をしていましたが、新型コロナ関連の相談が増え、多い日は1日10件を超えました。1件の電話に20〜30分を費やしたこともありました。対面の診療もしなければならない中、電話対応だけで平均して1日1時間以上を費やすというのは、来院中の患者さんの待ち時間も長引いてしまい、診療時間が1日4時間(18時〜22時)の当院にとってかなりの負担でした。

――時限的・特例的措置により、疾患を問わず初診のオンライン診療が可能になりました。クリニックでの実際の診療には役立ちましたか。

 かかりつけ診療と感染症診療を両立させるために、オンライン診療はとても有効だと感じました。それまでの発熱の電話相談では、診断についてお話しすることもできず、処方もできませんでしたが、オンライン診療にすればそれらが可能になりますので、患者さんにとっては安心感が格段に上がり、クリニックにとっては診療報酬が付くのはメリットです。

 発熱患者さんをオンラインでトリアージ(治療優先度の判断)的に診て、対面診療が必要な場合は、いつも診ている患者さんとは別の時間帯に来院、受診していただくようにしました。

 ピーク時、初診のオンライン診療は多い日で1日5~6人で、ほとんどが発熱など感染症の相談でした。感染拡大が落ち着いた5月半ばには、多くて1日2~3人に。一方、今まで会社帰りに来院していたかかりつけ患者さんは、テレワークを機にオンラインで受診する方も増えました。

 当院はLINEのビデオ通話を使ってオンライン診療を行っています。まず、当院Webサイトの「オンライン診療申込フォーム」に必要事項を入力し、受診希望日時を選択。次にLINEで当院のオンライン診療専用アカウントを「友だち」追加していただきます。当院で申込フォームの回答と保険証を確認後、LINEで予約日時をお知らせします。予約日時に当院から患者さんに連絡し、ビデオ通話で診察します。

使い慣れているLINEだからすぐに整えられた診療態勢

――会計はどのようにしているのですか。

 会計方法は、LINE Payなどスマホを使ったオンライン決済の使用をお願いしており、QRコード決済も取り入れています。診察前にどちらかが使えることを確認しており、未収金はほとんど発生していません。

――オンライン診療の専用システムではなく、汎用サービスのLINEを採用した理由はどうしてでしょう。

 当院は専用システムを導入していたものの、それまでほとんど使用機会がない状態でした。4月10日にオンライン診療の規制緩和に関する事務連絡があり、週明け13日からオンライン診療を始めるのに、使い慣れていない専用システムで滞りなく対応できるか不安がありました。その点、LINEは医師も患者さんも使い慣れています。コスト面でもLINEは無料なので優位だと判断しました。予約管理や支払いシステムとの連携などの運用方法は自前で構築しました。運用には細心の注意を払っています。

 オンライン診療を初めて導入する場合、情報のセキュリティ面に不安があるのであれば、保守性・安全性を重視して専用システムを導入する方が望ましいと思います。ICTに詳しい担当者がいないクリニックや医院では、ベンダーに相談して各クリニックの事情に合った専用システムを一緒に検討することも選択肢の一つです。もちろんコストも考慮しなければなりません。

出典:「プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド」(一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会)図1 P6から引用(https://www.pc-covid19.jp/files/topics//topics-5-1.pdf

――実際にオンライン診療では、どのような診察をされましたか。

 典型例は「数日前に急に発熱した」という患者さんです。ある患者さんは、体温が40度を超えていて新型コロナウイルス感染が疑われましたが、受け答えが比較的しっかりしていて、ご家族と同居されているので、解熱剤を処方して様子を見ることにしました(オンライン診療で処方された薬は薬局からの郵送も可能)。

 2日後にオンラインで再診すると、「熱は37度台に下がった」とのこと。それでも感染の可能性は否定できないので、発熱から10日は外出を控え、テレワークを勧めました。ご家族も体調の変化に気を付けていただき、可能ならしばらく周囲との接触を避けるように指示しました。

 そのほか、花粉症の咳や月経前の微熱など、新型コロナウイルス感染の可能性は低くても、体調に不安を感じ「感染したかも」と訴える患者さんもいました。このような場合も、オンライン診療でスムーズに対応できました。

コロナ禍で、状況が変わったオンライン診療
意外なメリットがあった!

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――対面診療と比べて患者さんの様子に違いはありますか。

 ご自宅からの受診は、診察室での“よそ行き”の顔と違い、こちらの質問にあまり身構えず答えていただけていると感じます。例えばかかりつけの方でも、ストレスを感じているかどうか、ご家族との関係性を伺うと、診察室ではあいまいにされることがあります。その点、オンライン診療では患者さんがリラックスしていることもあり、踏み込んだ質問にも比較的オープンに答えていただけるケースもあります。

――身構えないというのは意外なメリットと言えますね。改めて、オンライン診療のメリット・デメリットはどんな点が挙げられますか。

低い診療報酬や医療の質の担保など、普及の課題は多い

 前述のとおり、感染拡大対策としてのメリットは明らかです。ご高齢の開業医の先生の場合は、ご自身が新型コロナウイルスに感染すれば重症化するリスクもありますし、お一人で診療されているような場合では、クリニックは休診しなければならないケースもあります。感染拡大の切迫した状況では、非対面であることが一段と優位に働きます。

 一方で、デメリットもあります。診療報酬が通常の外来診療に比べ低く設定されていること、導入・運用の諸経費がかかること、触診や聴診、検査や処置ができず診療が不十分になりがちなこと、などが挙げられます。

――クリニックや病院の経営にとっては、あまり望ましくない制度になってしまっているのでしょうか。

 患者さんにとっては、通院負担の軽減や待ち時間の短縮はメリットになるでしょう。平時でも自宅にいながら受診したい患者さんは一定数いると思われます。

――オンライン診療が普及するための課題は何でしょうか。

 昨今の感染時の一番の懸念は、この秋冬の新型コロナとインフルエンザの混合流行です。対面とオンラインをどのように使い分けて適切に診療するか、決めておかなければなりません。一方で、平時のオンライン診療の議論は、現状は時限措置のオンライン診療の議論に包括されてしまっている部分もあり、論点がかなり複雑になっています。本来のオンライン診療の議論は、感染症対策とは切り離して行うべき点も多いはずです。

 オンライン診療が健全に普及するためには、適切なケース、不適切なケースを明確にする必要があると思います。「オンライン診療」とひとくくりにせず、各論レベルで、このケースではオンライン診療が適しているのかどうか、客観的・科学的に検討する視点が求められるのではないかと思います。

オンライン診療に積極的に取り組むMIZENクリニック
MIZENクリニック豊洲(写真)
https://www.mizenclinic.jp/
MIZENクリニック市ヶ谷
https://www.mizenclinic-ichigaya.com/

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