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今は耐える時期。苦境もいつかは終息に向かう

飲食店の再スタート、カギは厳しい今の準備の質

新型コロナウイルスの拡大により、全国的に大きな影響を受けている業種の1つが飲食業だ。先の状況を見通すことは現時点では困難だが、いつかは新型コロナウイルスも終息に向かっていくだろう。そのときに備えて、今何をしておくべきか――。厳しい時期だからこそ、真剣に考えることができるはずだ。飲食店コンサルタントとして各地の店舗にアドバイスをしてきた大久保一彦氏に、飲食店が生き残り、再び力強く成長するための考え方や方策を聞いた。

※本インタビューは2020年4月3日に行い、その時点までの状況をもとにまとめたものです。

飲食店コンサルタント
大久保 一彦(おおくぼ・かずひこ)
1965年神奈川県生まれ。法政大学を中退し、東京地方裁判所に勤務。その後、飲食店に転職。とんかつチェーン「新宿さぼてん」においては損益分岐点を下げる仕組み作りを行い、惣菜店展開の基礎を作った。東和フードサービス、ハイディ日高のような上場企業や、とんかついなば和幸などのチェーン企業の現場改善、業態開発、メニュー開発のブレーンとして活躍。現場に精通して数々の不振店の業務改善を行い繁盛店にしたことが書籍化され、その多くがベストセラー。著書に『非常識に売れる最強メニューがだれでもつくれる成功方程式』(ぱる出版)、『売上が倍増する! アンケートの作り方・活かし方』(PHPビジネス新書)、『寿司屋のカラクリ』(ちくま新書)などがある。

この記事のポイント

  • 一時的な後退も生き残るための有効な策。決断はスピーディーに
  • メニューの見直しや顧客との関係など、今は課題を見つめ直す時期
  • Web会議やチャット、キャッシュレス化などICTの有効活用に慣れるチャンス

厳しい環境だが、健闘している飲食店もある

――新型コロナウイルスの社会的インパクトは大きく、長期化が予想されます。大きな影響を受けている業種の1つが飲食業。その現状をどのように見ていますか。

 予約キャンセルや売り上げの大幅減少を受けて、多くの飲食店経営者が対応に苦慮しています。飲食店の顧客側である企業の多くは社員に対して、不要不急の飲み会や接待を避けるよう通達を出しています。すべての飲食店が影響を受けていますが、接待の多い店をはじめ都市中心部の店舗はより厳しい状況です。都心部などは、家賃も高いですからね。一方、郊外では地元客をつかんで営業を継続している店舗も見受けられます。(いずれも緊急事態宣言発令前の状況)

――飲食店の経営者は今何をすればよいでしょうか。

 こういうときですから、焦ることなく待つほかないと思います。時期は分かりませんが、いずれはこの苦境も収まるはずです。困難のさなかに色々と模索しているお店もあるでしょう。例えば、これまで経験のないテイクアウトやケータリングを始める店もあります。それによって多少挽回している店もあると思います。そういうこれまでとは違った手を打つのもいいのですが、私の考えとしては、この時期を再スタートに向けた準備期間と考え、これまでできなかったこと、後回しにしていたことにも取り組むべきだと思います。

――「売り上げが大幅に減った」という経営者に対しては、具体的にはどのようなアドバイスをしていますか。

飲食店必読
再スタートとV字回復に向けた、
大久保氏からの具体的な提言!

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生き残れば、次のチャンスをつかめる

 店を開いても赤字が続いているようなら、数週間、あるはもう少し長くなるかもしれませんが、店を閉めるのが得策だと思います。特に魚介類など値の張る食材は、使い切れないとロスが大きくなります。それよりも一定期間営業をストップして、メニューの見直しや顧客との関係づくり、衛生管理面など、これまでの課題について改めて考えたほうがいい。従業員としっかり議論して改善点を明らかにし、アイデアを出し合う。物理的に人が集まらなくても、Web会議やチャットなどの方法があります。こうした取り組みを真面目にやれば、スムーズな再スタートが切れるはずです。

――多店舗展開している場合、一部店舗の撤退を考える必要もありそうですね。

 状況によっては、やむを得ないでしょう。いったん身の丈に合わせて、リセットすることが次の飛躍につながります。また、賃料の高い物件を借りている店舗を低コストの場所に移転するのも一案です。いずれにしても、スピーディーな決断が求められます。生き残りのために後退するのは立派な戦略。生き残れば、次のチャンスをつかむこともできます。飲食店の支出の中で、賃料は大きなウエートを占めています。比較的新しい店の中には、売り上げに占める家賃の割合が2~3割になっているところもあります。飲食店の経営としては不健全でしょう。できれば5~10%程度に抑えたいところです。

――今回のコロナショックの前までは、五輪に向けて好景気といわれていました。急激な環境変化です。

 2019年までは「出店したい」という相談も多く、私は「五輪後まで待ったほうがいい」と話してきました。都市部では賃料が相当高くなっていたからです。「五輪が終われば賃料が下がる」と予想していたのですが、新型コロナウイルスの影響で撤退する店が増えれば賃料も下がるでしょう。五輪は1年延期になりましたが、賃料低下のタイミングはそれほどずれないかもしれません。

 2008年のリーマンショック直後を思い出します。賃料が急激に下がり、飲食店は有利な条件で入居することができました。この機会をつかんで、その後大きく成長した事例が多数あります。今回も同じかどうかは分かりませんが、いずれチャンスはやってきます。

――専門コンサルタントの方の見方ですね。期待しましょう。

ICTで店舗間のコミュニケーションを活性化させる

――先ほど、テイクアウトやケータリングの話についても触れていただいたと思います。もう少し詳しく聞かせてもらえますか。

 新たな事業展開や商品開発のノウハウは、一朝一夕で得られるものではありません。テイクアウトをするなら、冷めてもおいしい料理づくりが重要です。併せて、食中毒などのリスクを考慮した調理法なども工夫する必要があります。また、販路の確保も重要。なかなかすぐに対応できるものではないでしょう。

 ただし、将来に向けて今から準備をしておくという考え方には賛成です。リーマンショックや今回の新型コロナウイルスのような事態は、これからも起こる可能性があります。そのときに備えて、収入源を多様化させておくのです。テイクアウトやケータリングのほか、オンラインショッピングもできるかもしれません。例えば、レトルトカレーなどの商品を開発し、販路を開拓するという方法もあります。

――店で提供するメニューの開発についてはどのような方向が考えられますか。

 グローバリズムの見直しが進み、地産地消の流れが強まると私はみています。地方だけでなく、都会の飲食店でも特定の生産者と関係を構築しようという動きが強まるのではないでしょうか。だとすれば、飲食店の側が生産者を訪ねて「この農場はしっかりしている」と評価できなければなりません。食材や生産者の能力を見極める力が、これまで以上に求められます。

――Web会議に言及がありましたが、ICTの有効活用としてはどのようなものが考えられるでしょうか。

 この機会にWeb会議やチャットなどに慣れておけば、回復してきたときにも難なく使えるでしょう。店舗間のコミュニケーションもよくなるのではないでしょうか。顧客の顔が見えている店なら、SNSなどを使って普段から顧客とのコミュニケーションを図ることもできます。あるいは、キャッシュレスへの対応も検討すべきことでしょう。利便性だけでなく、衛生意識の高まりもあってキャッシュレス化はさらに加速するでしょう。Webサイトの拡充も考えられます。特に、オンラインショッピングに取り組む場合は有効だと思います。

――最後に、飲食業に携わる経営者に向けたメッセージをお願いします。

 平時の忙しいときは、従業員は目の前の仕事で精いっぱいで、経営者が「みんなで考えよう」と言ってもさほど本気になってくれません。今は、誰もが真剣になれる時期です。お客が店に来てくれることのありがたさを実感し、「お客さまに喜んでもらいたい」と心から思えます。だからこそ、店の課題や改善点をめぐって、実のある議論ができるはずです。

 経営者は今の状況を「新型コロナウイルスのせい」「政府のサポートが不十分」と言いたいと思います。そういう思いになってしまうのも分かるのですが、原因を環境に求めるのではなく、「自分たちに何が足りなかったのか」について考えることが大事だと私は思います。再スタートへの道は、そこから始まるのではないでしょうか。

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