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  • 開店・増店

逆風の飲食業界におけるサバイバル戦略

コストを抑えてテイクアウトに挑戦!

全国に5万を超える加盟店のネットワークを持つ出前館は、デリバリー料理のプラットフォームだ。同社は2020年末、クラウドキッチンを開設した。事業者は初期投資を大幅に抑えながら、月額使用料でキッチンを利用して、商品のデリバリーができる。厳しい環境の中、クラウドキッチンに関心を寄せる飲食店経営者は少なくない。ビジネスの新たな展開を検討する企業や個人事業主に向けて、出前館のデリバリーコンサルティング本部長である清村遙子氏にアドバイスを聞いた。

出前館
1999年設立。当初は自社でデリバリーを行うチェーン店を主な対象に、宅配チラシや電話、FAXなどを中心にデリバリー利用者とのマッチングを行うサービスを提供していた。これを大きく発展させたのが、2017年に本格始動したシェアリングデリバリー(配達代行)事業。以前はデリバリー手段を持つ加盟店だけが対象だったが、シェアリングデリバリーでは配達員のいない飲食店の料理も運ぶことができる。これにより加盟店はさらに拡大。ユーザーにとっては飲食店やメニューの選択肢が大きく広がった。

この記事のポイント

  • 出前館のデリバリー新規登録者数はコロナ前と比べて約5倍に
  • クラウドキッチンだと少ない投資でデリバリービジネスが可能に
  • デリバリーはイチオシメニューをつくって、リピーターを獲得すべし

低コストでのデリバリー進出を支援するクラウドキッチン

株式会社出前館
取締役 兼 執行役員 デリバリーコンサルティング本部長
清村 遙子氏

――新型コロナウイルスによる飲食店への影響をどのように見ていますか。

 コロナ禍は飲食店経営に多大なダメージを与えていますが、その大きさは企業、店舗ごとに異なります。これを機にテイクアウトやデリバリーに進出して、売り上げ減をかなり抑えられた飲食店もあります。デリバリーの取り組みをサポートすることで、私たちは加盟店の業績の下支えに少しでも役立ちたいと考えています。

――最近のデリバリー市場はどれくらい拡大しているのでしょうか。

 米国などに比べて、日本のデリバリー市場は小さいといわれてきましたが、新型コロナの影響を受けて、デリバリーを利用するユーザー数が増えたのは確かです。在宅でテレワークをしながら、料理の配達を頼むようになった方も多いのではないでしょうか。出前館の事業についていえば、ユーザーの新規登録者数(月間)は、コロナ禍の前後で5倍ほどに増えました。一方、飲食店など事業者からの加盟に関する問い合わせ(月間)も増加し、以前の約5倍となりました。現在、加盟店数は5万店を超えています。

――出前館が始めた「クラウドキッチン」が話題になっています。どのようなものですか。

 当社のクラウドキッチンが事業者に提供しているのは、調理スペースと設備、そしてデリバリーのリソースです。事業者が、自社で物件を探して設備を導入すると、デリバリー専業の店舗でも1000万円以上の初期コストがかかることもあります。クラウドキッチンなら物件や設備への投資は不要なので、初期投資を大幅に抑えて開業できます。

 2020年12月に、東京都江東区大島に初めて開設しました。同年秋から募集を行ったところ、多くの個人・法人から応募があり、事業プランなどを精査して最終的に3社を選ばせていただきました。料金は月額税込み18万円です。

――コロナ禍をいかにサバイブするか悩んでいる事業者にとって、魅力的なビジネスの場になりそうですね。クラウドキッチンのメリットについて、もう少し詳しく教えてください。

デリバリー成功のポイント、
よくある失敗のパターンを
詳しく解説

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 事業者にとってのメリットは大きく3つあります。

 第1に、先ほど説明した少ない投資でデリバリービジネスをスタートできること。第2に、当社が蓄積したデータを基に、運営に関するマーケティングなど様々なアドバイスを受けられること。例えば、「このエリアにはファミリー層が多い」や「中華の店が少ない」といったマーケティングに必要な情報を提供。出店者は、和洋中といった料理ジャンルの検討やメニュー開発に生かせます。

 そして重要なポイントが次の第3のメリットなのですが、1つのキッチンで複数のブランドを展開できることにあります。イートインの飲食店は通常、ラーメンとすしをメニューに並べるようなことはしません。しかしデリバリーではこれが可能です。実際、当社のクラウドキッチンでは、3社合わせて10以上のブランドが展開されています。例えば、ラーメンとチキン料理、かつ丼を1つの企業が提供するという具合です。複数ブランドを提供することで、つかんだお客様が高い頻度で注文してくれる確率は高まります。それは店の売り上げに直結する大きなメリットです。

クラウドキッチンで開業するメリット

  • 少ない投資でデリバリービジネスをスタートできる
  • 蓄積したデータから様々なアドバイスが受けられる
  • 1つのキッチンで複数のブランドを展開できる

クラウドキッチンを利用する飲食店

様々なブランドを展開する「ヴァーチャルキッチン」。クラウドキッチンでは4ブランドを展開。写真は、韓国ヤンニョムチキンブランド「韓国食堂 チキンタイム」のデリバリー用料理

定額制ワインバー「nomuno」を展開するノムノは、SNS映えする赤身肉「肉のヒマラヤ」を家庭でも再現できる「肉のヒマラヤ EXPRESS」を提供する

もともとは、お米や野菜を卸していた家族経営の兼業農家であるN-Fit.Food。クラウドキッチンでは、ドライエイジング近江牛と家族経営で育てた野菜(写真)などを融合させた料理を提供

――クラウドキッチンでの開業を目指している方に対して、成功のためのアドバイスをいただけますか。

 まず、お客様が求めている料理を見極めて提供することです。地域や季節によって、お客様のニーズは変化します。また、そのときどきのトレンドもあるかもしれません。そうした情報に常に注意を払う必要があると思います。

 次に、イートインの店舗とデリバリーとの違いを意識すること。イートインは調理したものをすぐに提供しますが、デリバリーは20~30分程度の配達時間がかかります。麺類なら少し固めにゆでるというように、調理法を変える必要があります。

 もう1つ、容器にも工夫が必要です。当社は容器メーカーと協力して様々な料理に適した容器を開発していますが、最適な容器を見つけるのは簡単ではありません。

クラウドキッチンで成功するポイント

  • お客様が求めている料理を見極めて提供する
  • 配達時間を考慮した調理方法にする
  • 料理に適した容器を使用する

デリバリーで失敗する原因

――デリバリーに取り組む際に、失敗しがちなポイントがあれば教えてください。

 成功へのアドバイスの裏返しという部分もありますが、3つのポイントがあると思います。第1に、初期投資を抑えられていないケースです。デリバリーでの開業を目指すとき、メニューを印刷して周辺地域でポスティングを行い、自前で配達までカバーしようとするとコストと人手がかかります。印刷とポスティングだけでも、百万円単位の費用になるでしょう。まずは、クラウドキッチンのような仕組みを活用し、一定の成果を上げてから自前で配達するなど、ステップを踏んで事業を成長させるというアプローチが望ましいと思います。

――リスクをいかに抑えるかは重要なポイントですね。

 特に個人事業主や起業を考えている方にとっては大切です。小さなリスクであれば、仮に失敗したとしても再チャレンジできますからね。

 第2に、イートインと同じやり方を踏襲して失敗するケースがあります。先ほど指摘した調理の仕方、容器選びなどに工夫が必要です。

 第3に、メニューづくり。お客様が選びにくいメニューで損をしているケースがよくあります。例えば、「イチオシメニュー」を大きく表示すれば、お客様にとっても分かりやすいでしょう。また、低糖質など他店にない特長を訴求して差別化を図ることも重要です。まずはお客様をつかむこと、そして、つかんだお客様からリピート注文を受けられるようなメニューづくりを意識していただきたいですね。

デリバリーで失敗しがちなポイント

  • 自前でやって初期投資がかさむ
  • イートインと同じ調理法や提供法を踏襲してしまう
  • イチオシメニューがなくて選びにくい

――これまでイートインのみで食事を提供してきた飲食店が、コロナ禍により、テイクアウトやデリバリーを検討しているというケースもあると思います。失敗する理由でもいくつか注意点がありましたが、イートイン店舗運営との違いでどんなことに注意を払うべきでしょうか。

 テイクアウトやデリバリーに乗り出す飲食店は増えていますが、その場合、現場のオペレーションが変わります。例えば、店舗とデリバリーの注文が同時に入ったとき、どのような優先順位で調理を行うか。店内と配達先、両方のお客様に満足してもらえるオペレーションの構築は簡単ではありません。当社でもアドバイスを行っていますが、経験や慣れといった要素も重要です。

――最後に、飲食店におけるICT活用について。デジタル機器などを上手に活用しているところもありますが、全体としてはあまり進んでいないという印象はあります。

 確かに、既存の飲食店ではアナログの部分が多く残っています。例えば、デリバリーの注文を受ける際、FAXを使っている店舗もかなりあります。また、店内のオーダーを厨房に伝えるときに、紙の伝票が使われるケースも多い。デジタル化による効率化の余地は大きいと思います。

 ただし、現状のアナログプロセスが最適という飲食店もあるでしょう。デジタル化をするにしても、投資を伴うだけに経営者にとって重要な判断になります。ですが、工夫次第ではデジタル化によって新しい可能性が見えてくるケースもあると思います。

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