
大企業や中小企業、自治体を問わず、紙からのデータ入力作業はいまだに多い。受発注伝票などは速やかにシステムに入力しなければならず、入力ミスは許されない。一方、人手不足が年々深刻化する中、細かい注意が必要でありながらルーティンワークに耐え得る人材を確保することは、今後一層難しくなる。そこで脚光を浴びているのが、紙の情報をシステムに自動入力してくれるICTツールだ。
企業規模の大小にかかわらず、国内の人手不足は深刻になっている。企業ブランドの高さや手厚い待遇、福利厚生などを売りにできる一部大手企業はともかく、中小規模の企業では人手を確保することに四苦八苦するといった状況が続いている。
人手が必要な業務には、どのようなものがあるだろうか? 例えば、伝票や領収書、請求書などのデータ入力業務は、多くの企業で人手のかかる業務の1つとされている。これらは手間と時間を費やすだけでなく、一定の熟練したスキルを要する業務であり、誰でもすぐにできるものではない。それだけに、経営者からすると人手確保の課題は「データ入力のスキルに長けた社員や、専門の派遣社員がいなくなったらどうなってしまうか」という危機感に直結する。すぐにスキルの高い人材を雇うことは現実的に難しく、事業継続に“危険信号”がともってしまう事態にも陥りかねない。
一方、世の中では「働き方改革」の嵐が吹き荒れている。こちらも余力のある大企業ならまだしも、最低限のメンバーで業務を回している中小規模の企業ではなかなか対応が難しい。何らかの方法で業務を効率化して、ビジネスを支えてくれている社員の働きに報いたいところだが、単純に労働時間を短縮したら業務が回らなくなるのは目に見えている。
何か抜本的に人手不足解消や業務の効率アップにつながる手段はないか?
そして、その上で商売繁盛、事業規模拡大を実現できないか――。こうした悩みは、昨今の中小企業の経営者にとって共通した課題だろう。
最近、パソコンで行っている業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールが注目されている。だが、業務の効率化が可能だといわれても、自社の業務のどこにRPAが適用できて、どのようなメリットが得られるかということは、実感しにくい。
そのような場合は、自社の業務の何が課題になっているかを考えてみるとよいかもしれない。前述の受発注伝票や請求書、申込書などの紙の書類を情報システムに登録するデータ入力業務は、ビジネスで欠かせない上にマンパワーが必要であり、特に中小企業では「紙」の業務が残りがちだ。多くの取引先を有する中小企業では、取引先が紙の伝票を使っている場合、それに対応しなければならない。消費者相手のビジネスでも、利用者のコンピューターリテラシーに大きな開きがあり、ファクシミリによる注文は容易にはなくせない。こうした「紙の入力業務」を省力化できたら、どんなにいいだろうか。
そこで着目したいのが、紙に記載された情報をコンピューターに登録するデータ入力業務を、うまくICTツールに肩代わりさせるサービスである。紙を1枚1枚めくってパソコンに入力していく作業は、人間にとって決して楽な仕事ではない。ミスが許されない上に単純な作業の繰り返しだ。ICTツールが自動的に伝票などの用紙を読み取ってデータをシステムに入力してくれたら、人手不足や働き方改革の課題に対応できるだろう。「RPA」といわれてもピンとこなかった経営者の方々でも、「紙の入力業務を自動化できる」と聞いたら自社での業務効率化のポイントに重なって見えてくるのではないだろうか。
AI-OCRという“特効薬”を
使いこなす
一方で、ICTに詳しい経営者にしてみると「紙の入力業務の自動化」は過去にも挑戦した苦い思い出があるケースも少なくない。紙の情報を読み取るOCR(光学的文字認識)の性能が、今と比べるとまだまだ発展途上だったからだ。マークシートの読み取りなら問題なかったが、手書き文字の書類となると業務での使用は難しかった。
そうした状況を一変させる“特効薬”が登場している。それが「AI-OCR」である。AI-OCRは、発展の著しいAI(人工知能)の機械学習やディープラーニングを応用して、活字のようにきれいではない手書き文字も正確に読み取る精度や、帳票のどの部分を読み取ればよいかという判断を、実用に堪えるレベルにまで高めたものだ。従来のOCRとは別物といってもよいほど、性能が飛躍的に向上している。
さらに、AI-OCRでは使い勝手も高まっている。従来のOCRソフトはスタンドアローン型のパソコン向けパッケージソフトが多かったが、最近のAI-OCRはクラウド型で提供されており、Webブラウザーからアクセスするだけでデータセンターの高性能なサーバーによる高速処理が可能である。ユーザーインタフェースも工夫されている。スキャナーで取り込んだ書類の「画像」と、AI-OCRで認識した「結果」を並列して見せることで、認識結果のチェックが直感的かつ容易にできるようになっている。
AI-OCRの登場で、「紙の用紙を読み取ってテキストデータに変換する」部分をICTツールに肩代わりさせることが、現実のものになってきた。そこで登場する力強い相棒が、先に紹介したRPAだ。AI-OCRで紙からテキストに変換したデータを、パソコン上の業務を自動化するRPAによって「情報システムの必要な項目に自動入力」できる。AI-OCRとRPAの合わせ技によって、「紙の用紙の情報をシステムに入力する」という業務の一連の流れが、高い効率と精度で実現できるようになってきた。
「今まで見聞きしたことのないものなんて、眉唾ものだろう」という見方もあるかもしれない。しかし、RPAの発展と普及はこの数年で一気に実現したことであり、OCRとAIの合わせ技も急速に精度を高めて実用段階に入ったものだ。要するに、ツールが出そろってサービスとして実用化できるようになったのが「今」ということなのである。中小企業の業務課題として長年の懸案の1つであった紙情報の入力業務を効率化するという視点に立つと、AI-OCRとRPAのセットは極めて大きな効果をもたらしてくれるといえる。
あなたの会社で山積みになっている紙の書類を、AI-OCRとRPAを組み合わせて自動データ入力できるようになったらどうだろう。データ入力作業は、AI-OCRとRPAに任せて人手不足を解消。単純作業で疲弊していた社員を創造的な業務に配置転換して、業務効率化と働き方改革を実現。そんな明るい未来が見えてくるのではないだろうか。
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