伊藤暢人
いとう・ながと
日経BP 総合研究所
中堅・中小企業ラボ 所長
広島県出身。1990年に東京外国語大学を卒業し日経BP社に入社。新媒体開発、日経ビジネス、ロンドン支局などを経て、日経トップリーダー編集長に。2017年、中堅・中小企業ラボの設立に携わり所長に就任した。幅広い業界の中小企業経営に詳しく、経済産業省や東京都などが主催する賞の審査員を歴任。
このコラムでは、人気歴史作家・加来耕三氏が、中小企業経営で失敗しないための教訓を、歴史の断片を切り取って解説します。
今回は、幕末の長岡藩の失敗です。長岡藩は、藩祖より「常在戦場」、いつでも戦場にいる心構えで事をなすという気風にあり、江戸時代、近代に入っても優秀な人材を輩出しました。
今回加来氏が取り上げた、ガトリング砲で有名な河井継之助と「米百俵」の小林虎三郎がその代表格です。ところが幕末から明治にかけて、長岡藩は苦しい状況に追い込まれました。何を掛け違ってしまったのか。加来氏はこのストーリーの中で、人が勇ましい主張、感情論に押されてしまうことの恐ろしさを指摘しています。
中堅・中小企業ラボ所長の伊藤暢人からも、事業存続の難しさなど、長岡藩の失敗から経営のために何を見いだすべきか、そのヒントを提示します。
加来耕三
かく・こうぞう
1958年大阪市生まれ。奈良大学卒。歴史家・作家。『英雄たちの選択』『その時歴史が動いた』(いずれもNHK)、『世紀のワイドショー! ザ・今夜はヒストリー』(TBS)などに出演。著書に『1868──明治が始まった年への旅』(時事通信社)、『加来耕三の戦国武将ここ一番の決断』(つちや書店)など多数。
挿絵:中村麻美
歴史を縦に見たとき、長岡が生んだ3人の男性の生きざまには考えさせられるものがあります。1人目は、中立を主張しながらも、世の流れに逆らい切れずに官軍との戦いに巻き込まれ、結局は敗軍の将となった河井継之助。2人目は、敗戦により厳しい財政を強いられる中、支藩から贈られた米百俵で人材育成のために学校を建設した小林虎三郎。そして3人目は、その学校で学びながらも、第2次世界大戦の開戦を当時の政府に思いとどまらせることができなかった山本五十六。
こうしてみると、小林が設立した学校は、今風に言えば、世の流れに立ち向かい長期的な視点で判断し、「ノー」と言える人材の育成を狙ったはずです。しかし、学校設立から70年ほどの間でその目的は風化してしまったのか、第2次世界大戦開戦につながりました。
70年後と言えば、2~3世代後ということになります。当時の苦労話を直接知る者がいなくなり、開校時に掲げた理想や目的が薄まってしまったのではないでしょうか。
企業も同じです。同族経営の会社で、2代目の経営者に会うと、「100年企業を目指したい」という話をよく聞きます。これは、創業者が30~40年ほど経営し、後を継いだ自分が10年あまり社長を務めていると、次の代かその次の代には100周年を迎えそうだ、ということが見えてくるからだと思います。しかし、代が進むにつれて創業時の理念は薄まり、そして市場環境は大きく変化してしまいます。「変えるべきことを変え、変えるべきでないことを守る」ことが経営の要と言われますが、まさにその見極めが、経営者にとって必要となるわけです。
他社は何を守り、何を変えていったのか、様々なケースを見ながら学ぶべきところでもあります。
伊藤暢人
いとう・ながと
日経BP 総合研究所
中堅・中小企業ラボ 所長
広島県出身。1990年に東京外国語大学を卒業し日経BP社に入社。新媒体開発、日経ビジネス、ロンドン支局などを経て、日経トップリーダー編集長に。2017年、中堅・中小企業ラボの設立に携わり所長に就任した。幅広い業界の中小企業経営に詳しく、経済産業省や東京都などが主催する賞の審査員を歴任。
2017年4月に本格的に稼働した「日経BP 総合研究所 中小企業経営研究所」は18年4月に「日経BP 総合研究所 中堅・中小企業ラボ」と所名を変更し、中堅・中小企業の成長と経営健全化を支援するために活動を進化させています。これまで培ってきた経営・技術・生活分野での見識を活かし、情報発信や調査、教育、コンサルティングなど様々な形でサポートします。
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