伊藤暢人
いとう・ながと
日経BP 総合研究所
中堅・中小企業ラボ 所長
広島県出身。1990年に東京外国語大学を卒業し日経BP社に入社。新媒体開発、日経ビジネス、ロンドン支局などを経て、日経トップリーダー編集長に。2017年、中堅・中小企業ラボの設立に携わり所長に就任した。幅広い業界の中小企業経営に詳しく、経済産業省や東京都などが主催する賞の審査員を歴任。
「歴史の失敗学」では、高度 ICT 時代の中小企業経営者が失敗をしないように教訓となる歴史の一片を、人気歴史作家・加来耕三氏が書き下ろします。今回は、事業継続の難しさを三国志のハイライト、「赤壁の戦い」から、明らかにしました。
今回のストーリーに取り上げた「魏」の曹操は、赤壁の戦いの頃、三国の中で最も強大な力を蓄え、中国大陸三分の二を支配し、間もなく天下統一を成し遂げようという勢いがありました。ところが、赤壁の戦いの折、魏軍に風土病が蔓延、しかもそこに「呉」の苦肉の計が繰り出されます。
中国統一という攻めの事業も、一転、予期せぬ事態にすべてを失いかねないという状況に陥ったのです。とはいえ、曹操はすべてを失うことはなく、事実上の中国全土の王となった、と加来耕三氏は説きます。曹操は何に失敗し、その後、いかなる判断で最悪の事態を回避したのでしょうか。
中堅・中小企業ラボの伊藤所長からも、今回のストーリーから何を見いだすべきか、そのヒントをご提示します。
加来耕三
かく・こうぞう
1958年大阪市生まれ。奈良大学卒。歴史家・作家。『英雄たちの選択』『その時歴史が動いた』(いずれもNHK)、『世紀のワイドショー! ザ・今夜はヒストリー』(TBS)などに出演。著書に『加来耕三の戦国武将ここ一番の決断』(滋慶出版/つちや書店)、『徳川三代記』(ポプラ社)など多数。
挿絵:中村麻美
赤壁の戦いで曹操が敗れたのは有名な話です。だが、その曹操はその後、魏によって事実上の中国の覇者となりました。書物をひも解けば、曹操は決して格好良いとは言えないようなタイプだったとか。その人物がなぜここまでの“偉業”を成し遂げたのでしょうか?
戦術研究者でもあった曹操は、陸戦では大胆な策を取ることでも有名でした。予想を超える大胆な戦略で翻弄し、相手を打ち負かしてしまう、こうして並み居るライバルに競り勝ってきたのです。反面、とても慎重な一面を持ち合わせていました。常に最悪の事態を考え、それ以上のリスクを冒さない。その手堅さが「破滅」から曹操を救ってきたのだと考えられます。赤壁の戦いでも、面子と言うことを考えれば、曹操が無理をして再攻撃を仕掛けるという無謀な策もとり得たはずです。しかし、曹操は自重したことで、後に事実上の中国の覇者の座をつかんだわけです。
現代の企業経営でも、この二面の重要性は同じです。企業を改革し飛躍させようとするのであれば、大胆さが経営者に求められます。一方で、世代を超えて継続していこうとするのであれば、慎重さは不可欠です。どちらか一方がかけても、企業は世代を超えて長く続けることは難しくなります。今、世の中で求められるのは、働き方改革と事業の継続性の両方です。大胆な視点で改革を押し進め、慎重な姿勢で事業を守っていく、時には外部のリソースを活用しながらも、この姿勢を貫くことが経営者に求められているのです。
伊藤暢人
いとう・ながと
日経BP 総合研究所
中堅・中小企業ラボ 所長
広島県出身。1990年に東京外国語大学を卒業し日経BP社に入社。新媒体開発、日経ビジネス、ロンドン支局などを経て、日経トップリーダー編集長に。2017年、中堅・中小企業ラボの設立に携わり所長に就任した。幅広い業界の中小企業経営に詳しく、経済産業省や東京都などが主催する賞の審査員を歴任。
2017年4月に本格的に稼働した「日経BP 総合研究所 中小企業経営研究所」は18年4月に「日経BP 総合研究所 中堅・中小企業ラボ」と所名を変更し、中堅・中小企業の成長と経営健全化を支援するために活動を進化させています。これまで培ってきた経営・技術・生活分野での見識を活かし、情報発信や調査、教育、コンサルティングなど様々な形でサポートします。
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