
AWS入門 初心者が覚えておくべきAWSの基本
「コンタクトセンター」は、従来のコールセンターの枠組みを超えて顧客に新たな体験を提供できる仕組みです。昨今にみられる顧客行動の多様化に対応すべく、従来のコールセンター機能を拡充してコンタクトセンターが作られました。しかしながら、コンタクトセンターについて良くわからないという方もまだまだ多いのはないでしょうか。そこで今回は、コンタクトセンターについて従来のコールセンターとの違いも交えて解説していきます。
コンタクトセンターとは、SNSやメール、チャットなど電話以外の手段からの問い合わせも一括でサポートする組織です。従来のコールセンターと呼ばれる組織は、電話以外の手段での問い合わせ対応は実施できませんでしたが、SNSやアプリ、メールなど顧客との通信手段の多様化から、コールセンターからコンタクトセンターに仕組みが進化しました。
コンタクトセンターの業務の種類は、商品の営業などのために顧客へ電話をかけるアウトバウンドと、顧客からの問い合わせなどを受けるインバウンドがあります。またコンタクトセンターのように複数の通信経路を取り扱うことはオムニチャネルと呼びます。
コンタクトセンターは、ITシステムなどを活用してオムニチャネルで一定のサービスレベルを提供することで、顧客に安心や信頼を感じてもらいやすいことが魅力です。またコンタクトセンターの運営で得られる情報は、今後の企画開発やサービス向上のためのマーケティングに使用できるため、企業に対して多くのメリットがあるのが特徴です。
コンタクトセンターの形態としては、オンプレミス型とクラウド型があります。
オンプレミス型は、自社で保有するサーバーにシステムを導入して運用する形態です。自由にシステムを設計できる反面、導入費用や運用費用がかさみます。また、オンプレミスの欠点は拡張性と可用性にもあります。拡張性については、席数を増減させようとしても設定に手間がかかる、業者への依頼で余計な費用がかかるといった欠点があります。特に季節によって繁閑の波がある場合、忙しい時期だけ席数を増やしたい時に即座に対応できない、逆に忙しい時期の席数に合わせていると閑散期にはライセンスが無駄になってしまうということもあります。可用性については、オンプレミスだと多くの場合は費用の都合で自社のみにシステムを配置することになりますので、自社が災害に見舞われた時などに切り替えられるシステムが無く、システム停止リスクは拭いきれません。
一方クラウド型は、ネットワーク上のサーバーにあるシステムをサービス事業者から借りて運用する形態です。導入期間は短期間で済み、導入費用や運用費用を抑えられることが魅力です。また拡張性と可用性についてもオンプレミス型よりも優れており、拡張性に関しては、必要な時に費用が許す範囲で実質無限にシステムリソースを増やせます。可用性においても、複数のリージョンでサーバーリソースが運用されており、一つのリージョンで災害が発生しても、他のリージョンのリソースを使ってシステム運用を継続できることが大きな魅力です。
コールセンターは、主に電話を使用して顧客対応を実施する組織です。コンタクトセンターのように電話以外の手段は利用せず、企業によってはコールセンターを専門とする企業へ外注する場合もあります。
最近の傾向として、顧客は購入したときに感じる体験や企業との対話にも価値を置くようになったため、コンタクトセンターは顧客との良好な関係を構築する役割を任されています。
従来のコールセンターの役割だけではなく、顧客体験価値を高め、エンゲージ(愛着)を持ってもらえれば「ファン」を獲得でき、売り上げが安定していきます。
また顧客対応によって得た情報を開発部門やマーケティング部門へ展開できれば、サービスの企画や製品開発、マーケティングの効果を高められるため、大きな期待を寄せられているのです。
コンタクトセンターの運営を効率化していくためには、従来コールセンターにあったPBX、電話機、座席、オペレーターの他にもシステムが必要になります。それぞれ必要なシステムの内容をみていきましょう。
CTIとは、Computer Telephony Integrationの略で、電話とコンピューターをつないでコールセンター業務をスムーズにするシステムです。電話番号と顧客情報や取引内容を紐づけて、受電の際に画面に必要な情報を表示でき、さらにオペレーターの受信を振り分けることで、対応時間の均等化を図れます。
管理者のオペレーターモニタリング機能もあり、通話中でもささやき機能などで指示を出せ、また通話録音などで顧客対応を後からでも分析できます。
CRMはCustomer Relationship Managementの略で、顧客情報や顧客の対応履歴をデータとして蓄積し、部署間やオペレーター間で共有するシステムです。オペレーターは顧客とのコンタクト履歴を入力して共有することで対応の二重化や漏れを防げ、管理者はCRMを参照して、顧客ごとの対応状況をチェックできます。
チャットボットとは、チャットとロボットを組み合わせた造語で、チャットで対話できるロボットのことです。チャットボットを導入すれば、対応の自動化によりオペレーターの負担を減らせ、かつチャットボットはロボットなので24時間対応が可能になります。問い合わせの切り分けを行う1次対応に向き、ナレッジやFAQデータを蓄積できるため、コンタクトセンター側のヘルプとしても機能します。
その他、AIなどで顧客の感情を分析し、対応品質を向上させていくシステムも各社で開発が進められています。
コンタクトセンターによくある課題は、基本的に先述したシステムを駆使して対応していくことになります。ここでは、それぞれの課題とその解決方法をみていきましょう。
これまでの経緯を踏まえてオムニチャネルでの対応品質を改善していくためには、CRMで顧客情報を一元管理することが必要です。顧客情報を一元管理することで、どのオペレーターであっても過去の経緯を踏まえて品質の高い応対が可能になり、対応漏れや二重対応を抑止できます。SFA(Sales Force Assistant:営業支援システム)と連携することで、顧客リストと問い合わせてきた顧客を照合して顧客情報をポップアップ表示するなどの機能を備えたシステムもあります。さらにチャットボットを併用することで、顧客側でも自己解決が可能となり、顧客の待ち時間を短縮でき、顧客満足度の向上にも寄与できます。
オペレーターの対応時間短縮のためには、音声案内で利用者にダイヤルボタンで選択してもらうCTIの機能を活用できます。近年ではチャットボットでの一時切り分けやFAQ検索を促し、顧客が自己解決できるようにする手法も多くとられるようになってきました。
CTIの入電分配機能を用いて、ベテランには優先的に入電を割り振り、不慣れなメンバーに入電が集中しないようにするなどといった対応でも改善が見込めます。
また、CTIのモニタリング機能を活用して、管理者は定期的に対応時間の改善について検討・対応していけます。
顧客からの成果獲得については、通話内容や顧客状況をCRMに保存できるため、架電禁止登録などで無駄な発信を防止できます。また架電した結果のステータスを元に効果的な再架電リストを作成し、架電リストをもとにシステムが自動的に複数回線に同時発信して、応答があった電話のみオペレーターに繋ぐという対応が取れます。今後はAIを活用した顧客感情やニーズの分析などが期待されるでしょう。
コンタクトセンターのシステムを駆使することで、新人オペレーターであっても、オペレーター向けFAQシステムやチャットボット、トークスクリプト機能などで自己学習でき、さらに管理者は通話内容をモニタリングしながらアドバイスできるため、すぐにナレッジを共有できる環境を整えられます。
Amazon Connectは、クラウド環境で構築できるコンタクトセンターシステムで、スモールスタートで始めたい方や小規模の企業への導入で効果を発揮します。海外にも非常に安いコストで通話をかけられるため、グローバルに事業を展開する場合にもおすすめです。さらにNTTのボイスワープを併用することで、自宅などで会社代表番号への着信や移転・改装中の店舗代表電話番号への着信対応を実現していけます。またシンプルなコンタクトコントロールパネルを実装することで、使いやすくどなたにもご利用いただけるサービスに仕上げてあります。
構築の仕方について詳しく知りたい方は「新入社員が入社半年でAmazon Connect構築してみた!!!」をご覧ください。
NTT東日本が提供するAmazon Connectを利用したコンタクトセンターソリューションについては「Amazon Connect|クラウドソリューション」をご覧ください。
コンタクトセンターを活用することで、やりとりする顧客に対して優れた体験を提供できるようになります。エンゲージを獲得し、ファンを拡大することで、ひいては売り上げの向上に繋がっていくでしょう。さらに顧客対応によって得た情報を開発部門やマーケティング部門へ展開できれば、自社の事業拡大に活用でき、よいサイクルが生まれていきます。課題は複数存在するものの、ITシステムを活用することで克服が可能です。
コンタクトセンターをうまく活用し、良い顧客体験を提供していきましょう。