ICT教育で
「子どもたちが夢中になる学校」を
つくる!

いま、多くの地方都市が少子高齢化による人口減少に悩まされている。福島県の楢葉町は、これに加えて東日本大震災による原発事故後の長期避難が重なり、若い家族や子どもたちを中心とした「町離れ」が進んでしまった。そこで、子育て世代にとっての町の魅力を増やそうと、楢葉町が考えたアイディアのひとつが、ICTの力を活用して「子どもたちが夢中になるような学校をつくる」こと。東日本大震災後の2017年、いわき市の仮設校舎で行っていた授業を楢葉町で再開させることになり、新校舎を建設し、魅力ある学校づくりのためにタブレットや電子黒板を取り入れた。また、校務支援システム、授業支援システムを導入し、教師の負担を減らしながら生徒の興味を高める授業を行うことにも成功している。特色あるICT教育で活気を取り戻しつつある楢葉町、その取り組みを実践している先生方に、めざす学校教育やICTの効果についてお聞きした。

導入の目的
「子どもたちが夢中になる」魅力的な学校をつくりたい
タブレットや授業支援システムを導入し、ICT教育を推進

福島県双葉郡楢葉町立楢葉中学校

  • 福島県双葉郡楢葉町立楢葉中学校福島県双葉郡楢葉町立楢葉中学校

(左から順に)NTT東日本 福島支店 ビジネスイノベーション部 部長 宮沢 繁、安倍 聖教諭、荒木 幸子校長、NTT東日本 ビジネスイノベーション本部 プロダクトサービス部 担当課長 小島 章教

楢葉町がめざす
「質の高い学校教育」とは

――楢葉町は、中学校の新校舎にWi-Fi環境を整備し、生徒ひとりに1台タブレットを整備して、先進的なICT教育を推進していらっしゃいます。ICTを導入したきっかけについてお聞かせください。

荒木校長:楢葉町がめざしているのは、「若い世代にも、高齢者にとっても魅力ある町づくりをすること」。この目標に向け、数年前から町の若手職員を中心にして、経済、教育、福祉、さまざまな観点で議論・検討を重ねてきました。そのなかで挙がってきたのが「魅力ある町をつくるには、なによりも子どもたちに質のよい学びの機会を提供することが欠かせないのではないか」という声だったのです。

ちょうど校舎を建て替える計画が進んでいたこともあり、これを機に、他の地域にはない、楢葉町ならではの「質の高い学校教育」を提供しようということになりました。現在は、「少人数学級のよさを生かした授業の実践」「外国語教育の充実」「ICT教育の導入」などを推進し、より質を高める運用や活用の方法を検証しているところです。

――なぜ「質の高い教育」のためにICTの導入が必要だったのでしょうか?

荒木校長:ICT機器は、いまや「当たり前のもの」です。これからの時代を生き抜く子どもたちにとって、ICT機器を活用するための習慣やノウハウを身に付けることは、とても大事なことと考えています。また、より効率的な授業、ためになる授業を行うためにも、ICTの導入が欠かせないと思いました。

安倍先生:実際に、タブレットや電子黒板を使うことで教室内での情報共有がスムーズになりました。たとえば教員の質問に対して、ひとりの生徒が回答を書き込むと、別の生徒がアプローチの違う回答を書き込みます。するとクラス全員でのやりとりが巻き起こり、そこに教員が入っていくというような授業ができるようになりました。まさにアクティブラーニングですよね。いままでは、理解に時間を要する生徒が置き去りになってしまったり、授業に興味を示さない子どもがつまらなそうにしていたりすることもあったのですが、一人ひとりの目の前にタブレットがあると、それだけで乗り気になり、「みんなから反応がもらえるような書き込みがしたい」という意欲と興味、「おかしなことは書けないぞ」という緊張感のようなものが生まれるようになりました。

――そうした授業は、どのようなアプリケーションを使って行っているのでしょうか?

安倍先生:楢葉中学校では、NTT東日本の「おまかせ教室 テックキャンパス(※1)」という授業支援アプリケーションを導入しています。これには、生徒や教員が自由にファイルを投稿し、みんなで共有や書き込みができる「学び合いスペース機能」というものがあり、これを活用することで、子どもたちとのやり取りや子どもたち同士の対話が非常にスムーズに進むようになりました。

「チャット機能」も重宝しています。授業の最後に自分の言葉で振り返りを書き込んでもらうようにしているのですが、これによってタイムリーに、生徒一人ひとりがどう理解したかがわかるのです。生徒がどういう風に考えたか、1時限のなかでなにを学んだのか生徒同士でも見て取れるので、従来の授業で行われていた「ひとりでの学習」が、いろんな人との関わりによって広がる学習に変わったなと実感しています。

※1 エヌ・ティ・ティラーニングシステムズ株式会社の技術を採用しています。

職員室に常駐するICT支援員が、
教員をバックアップ

――導入の際に苦労されたことがあればお教えください。

荒木校長:毎年の予算を確保すること、Wi-Fi環境を整えること、教員の研修、といったところです。予算の確保については、ICT教育の必要性や機器の有効性を根気強く町当局に伝え、理解していただきました。

Wi-Fi環境の利活用や教員の研修については、NTT東日本が手配してくれたICT支援員さんの助けがなければ実現できなかったと思っています。学校の職員室に机を用意し、1名常駐していただき、「楢葉の一員」「教員と同じ立場」で、チームとして、ICT教育の導入・推進に携わっていただきました。教員への研修を実施していただくだけでなく、「タブレットが動かない」などのトラブルが発生したときも、すぐに相談してぱっと助けていだたけるので、本当に助かっています。ほかにも「こういう授業をしたいんだけど、いいアプリはありませんか?」といった相談や、教材のつくり方についても、専門的な知識を生かして的確にアドバイスしてくださいます。

また、ICTを活用した事例として安倍先生の授業を公開することとなったときも、支援員さんが聖心女子大学の益川弘如教授にアドバイスをいただくためのテレビ会議をセッティングしてくれました。

ICTは導入して終わりというものではありません。むしろ導入したところがスタートです。今後も支援員さんと一緒に、どんどん内容をバージョンアップさせて、質の高い教育を行っていきたいと考えています。私たちにとって支援員さんは大切なパートナーです。

自分の思いや考えを
豊かに表現できる人を育てたい

――新校舎でのICT教育がはじまり、半年以上が経過しました。現在はどのような科目で、どんな授業を行っているのでしょうか?

荒木校長:数学、英語を中心に、理科、社会、体育、総合的な学習の時間などでICTを活用しています。

安倍先生:私が担当する数学では、おもに手書きノートとタブレットを併用した授業を行っています。まずは課題を与え、解決の方法を考えてもらい、学習の振り返りができるよう手書きでノートづくりを行います。出来上がったノートをタブレットで撮影し、クラス全員で共有、互いのノートを参考にしながらプレゼン用の資料をつくって発表をするというのが大きな流れです。「ノートを撮影して共有する」というステップを取り入れたことで、生徒たちがより真剣にノートづくりを行うようになり、また、一生懸命つくったノートを持ち帰ることで、家庭での学習を充実させることができるようになりました。

荒木校長:管理上の都合でタブレットを持ち帰ることはできませんが、この方法なら、しっかりと家庭学習ができます。学びにおいてノートづくりは、絶対に欠かせないもの。自分の頭で考え、手を動かして文字を書き、ノートを取るということをしなければ、子どもたちの学力はなかなか上がりません。半年以上ICT教育を実践してみて、ICTだけにこだわるのではなく、アナログ・デジタル、それぞれのよいところを生かしながら指導計画を考えるというのが、ICT教育を成功させるカギになるのではないかと感じました。

私たちがめざしているのは、自分の思いや考えを「口頭で表現する」「文章で表現する」ことができる人を育てること。今後は情報の共有だけでなく、発表や表現にも、より積極的にICTを生かしていきたいと考えています。福島県の諸地域に先駆けて、ICT教育を推進し続けたい――、そんな思いで、日々、教育の現場に向き合っています。

*導入サービス:「Bizひかりクラウド おまかせ校務」「おまかせ教室」(いずれも2017年4月導入)

*文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2018年8月時点(インタビュー時点)のものです。

*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

Column 専門家から見たICT教育のメリットと必要性 聖心女子大学文学部教育学科 益川弘如教授

ICT教育は、これからの社会に必要な、イノベーション能力、コラボレーション能力、情報活用能力などを育むことにつながります。特にタブレット端末を活用した学習では、自分の考えを表現するだけではなく、他者と考えを共有比較して吟味することを通して、さらに新たなアイデアを生み出す活動を支援することができるのです。このような活動を、各教科を通して数多く経験していくことで、知識創造社会に必要な資質・能力が磨かれていくことでしょう。

予算、教師や保護者の意識の問題など、さまざまな課題があるかと思いますが、現状を踏まえつつ一歩一歩着実に、ICT教育を行うための整備をしていく必要があると考えます。

学校名 福島県双葉郡楢葉町立楢葉中学校
主な沿革 1963年に南北の中学校を統合し、楢葉中学校となる。1994年にコンピュータ室を新設するなど、教育現場へのICT導入を早期より実施。2011年に東日本大震災が発生し、全生徒が一時的に県内外へ区域外就学。2012年にいわき市にて学校再開。2017年に楢葉町新校舎にて教育活動再開。
生徒数 33人(2018年5月1日)

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