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ICT活用で外国人観光客の意外な動向が判明!
データドリブンマーケティングで最適な施策を導き出せ

年間1500万人以上の観光客が訪れる札幌市では、近年急増する外国人観光客のニーズや動向の把握が課題となっていました。国内観光客とは傾向が違うため、経験則から誘客プロモーション施策を検討するのは難しく、データ収集・分析によって現状を的確に把握する必要性が高まりました。そこで札幌市では「ICTを活用した観光マーケティング推進業務」をNTT東日本へ委託。2017年から運用している官民のデータ連携基盤「札幌市 ICT 活用プラットフォーム」を利用して、来札観光客の動態把握・施策検討を目的としたデータ分析、および観光周遊促進・消費拡大施策を目的としたデータの利活用に取り組んでいます。これまでの取り組みやその成果について、札幌市経済観光局の和田康広課長にうかがいました。

札幌市

  • 札幌市札幌市

ソリューション導入効果

  • データ分析で新たな視点を得られ、分析結果に基づいて限りある財政の中で選択集中したプロモーション施策を実施できた
  • 埋もれていた観光資源を発掘でき、新たな周遊計画の立案が可能になった
  • 官民でデータドリブンマーケティングに取り組む先進的な風土を醸成できた

NTT東日本選定のポイント

  • 事業の趣旨や意図を理解したうえで的確なデータ分析・利活用の提案があったこと
  • データの収集・加工に経験とノウハウがあり、分析や、分析したデータの利活用まで一貫して支援してもらえること
  • 変化する社会状況に合わせながら細かな部分まで柔軟かつ丁寧に検討してくれること

急増する外国人観光客の現状と動向の把握が課題
ICT活用したデータ分析へのニーズが増大

――札幌市ではICTの活用をどのように進めてきたのでしょうか。

和田氏:まず、2013年にまちづくりの総合計画として「札幌市まちづくり戦略ビジョン」を策定しました。このとき、今後は積極的にICTを活用すべきだという議論があり、これを受けて2017年に、まちづくりにおけるICT活用の基本的な指針となる「札幌市ICT活用戦略」を策定しました。この戦略では、札幌市が持つ多様な価値を高めるとともに、さらに新しい価値を生み出すことを目標にしています。

具体的な取り組みのひとつとして、札幌市の出資団体である一般財団法人さっぽろ産業振興財団が、NTTグループの協力のもと「札幌市 ICT 活用プラットフォーム」を2017年に構築しました。これは札幌市が持つ行政オープンデータに加えて、民間が保有している購買情報や交通機関データなどさまざまなデータを集めて分析し、利活用していくためのデータ連携基盤です。官民でデータを集めて活用している例は全国的にもそう多くありません。プラットフォーム構築の目的は地域の課題解決であり、現在はおもに「観光」「健康」「交通・雪対策」の3分野で実証事業を進めています。

――重点3分野のひとつに観光分野を選んだ理由は何だったのでしょうか。

和田氏:観光は札幌の経済を引っ張っていく重要な一分野に位置づけられており、特に近年はインバウンドが著しく伸びていました。新型コロナウイルス感染拡大前の札幌市の観光客の割合は、道内からの旅行者が全体のおよそ1/3、道外が1/3、海外からが1/3。消費額では外国人観光客が半分以上を占め、無視できない大きな存在になっていました。

札幌市 経済観光局
観光・MICE推進部 観光・MICE推進課
課長 和田 康広氏

インバウンド消費を取り込もうという意識は市内観光事業者の間でもどんどん高まっていました。飲食店ではメニューの多言語化をしたり、通信環境を整えたり、いろいろな工夫をしています。札幌市でも「Sapporo City Wi-Fi」をNTT東日本に委託し、2015年より運用しています。

ただ、急増した外国人観光客への対応はまだまだ追いついていません。国内観光客の傾向であれば、長年の経験や勘である程度わかりますが、外国人観光客は国籍によってニーズも行動パターンも、消費動向も違います。市がプロモーション施策を打つにも、観光事業者が商売の戦略を立てるにも、まずは現状がどうなっているかを知る必要がありました。データを収集して分析し、解決策を見つけていきたいというニーズが大きくなっていたのです。

データドリブンの軸はブレさせず柔軟に対応
ゼロから作り上げた新しい観光マーケティング

――「ICTを活用した観光マーケティング推進業務」は公募型プロポーザルでした。どのあたりをご評価いただけたことがNTT東日本の採用につながったのでしょうか。

和田氏:本事業では、データの収集・加工、そのデータの分析、分析したデータの利活用とさまざまな業務が発生します。一貫して支援してもらえるかを総合的に評価しました。

今回の事業では、携帯基地局データ・動態データ・SNSツイートを収集し、誰がどこにいるのか、どこから来て次にどこへ行くのか、何をしているのかなどを把握しています。これらのデータ収集と加工の手法について経験とノウハウを活かした具体的な提案があったこと、加えて独自のデータ収集の提案もあったことを高く評価しました。NTT東日本からの独自提案は、観光施設の入り口でタブレットを使った短時間のアンケートを実施し、来場者の国籍把握をするというもの。プロモーション施策を考えるうえで国籍は重要ですが、観光施設の多くは来場者の国籍把握が不十分でしたので非常に参考になりました。データ分析については、プロモーション施策につながる分析、たとえばターゲット国選定の根拠などが具体的に提示された点を評価しました。

――データドリブンマーケティングは初めての取り組みだったそうですが、スムーズに進みましたか。

札幌市役所本庁舎。屋上には街を見渡せる無料の展望回廊がある。

和田氏:NTTグループには「札幌市 ICT 活用プラットフォーム」の構築時から協力してもらっており、ゼロから一緒に作り上げてきた事業といえます。走りながら考えていく部分もありましたが、細かな打ち合わせを重ねてやり方を一緒に考えてくれて本当に助かりました。

データ分析を軸としつつも、我々の思いもきちんとくみ取ってくれたことにも感謝しています。たとえば、データ分析で観光客が少なかった場所は画一的にプロモーションから除外するのではなく、むしろ少ないからこそ力を入れたい場所もあります。そのあたりを柔軟に対応してくれました。

また必要なデータは状況によって変化することもあります。今後はコロナ禍でゼロになった外国人観光客がどう戻るかも知りたいと思っていますが、そうしたニーズの相談にも丁寧に対応してくれて助かっています。

我々は観光の知識はありますが、データの加工や分析は得意分野ではありません。そこをNTT東日本に補ってもらい、両輪で進められたのが成果に結びついたのだと思います。

コロナ禍では国内観光客の取り込みに注力
施策の選択と集中にはデータ活用が効果を発揮

――今回の事業で具体的に取り組んだことや成果を教えてください。

和田氏:データの収集・分析によってこれまでわからなかった動向が見え、新たな誘客プロモーションを実施できています。2019年度は台湾人観光客向けのプロモーションに取り組みました。台湾をターゲットにしたのは、北海道への入込客の割に札幌市に取り込めていないことが、NTT東日本の分析でわかったからです。市内観光地では北海道神宮が台湾人観光客に人気が高いのですが、近隣にある円山動物園を訪れる人は少ないことがデータ分析でわかりました。そこで北海道神宮から円山動物園へ送客するプロモーションをしたところ、台湾人観光客が増加しました。

民間の観光事業者にもデータを利活用する動きが広まりつつあります。たとえば、韓国人観光客が多いエリアにある小売店が、自店のPOSをチェックすると、周辺の韓国人観光客を取り込めていないことが判明。店頭のデジタルサイネージに韓国語のプロモーションを表示させたところ、自店への呼び込みに成功しました。ほかにも韓国人観光客向けに化粧品を充実させていた店舗が、他店舗ではお菓子が好評だというデータを見てお菓子の品ぞろえを拡充させ、売り上げアップにつなげた例もあるなど、少しずつ成果が出てきています。

データ分析は新たな観光資源の発掘にもつながっています。データ分析を通じて初めてわかったのが中島公園に台湾人観光客が多いこと。調べてみると、歩くスキー(クロスカントリースキー)体験ができ、これを目当てに訪れていることがわかりました。最近はニーズの多様化とともに、アクティビティも増え、埋もれた観光資源を見つけにくくなっています。観光が多様化する現代においては、データに基づいたマーケティングは非常に効果的。行政の財政にも限りがあるので、従来は全方位的にやっていたプロモーション施策も選択して集中的にやっていかなくてはなりません。施策の効果を確実に出すためにはデータの利活用が非常に重要だと考えています。

一方で、観光事業者にデータを利活用する重要性を意識してもらうのは、そう簡単ではありません。今後はさらに多くの観光事業者にデータを利活用してもらえるよう、ワークショップの実施や事業の成功事例の積み上げなどを地道に進めていきたいと思います。

――2020年度はコロナ禍の影響で旅行市場が一変していますが、どのように事業をどう進めていきますか。

和田氏:現在インバウンドはほぼゼロの状態。国内旅行需要の取り込みをこのタイミングでしっかり見直し、収集すべきデータや分析の手法も必要に応じて変えていきたいと思います。

今後分析したいのがリピーターです。現在は初回の観光客に対しても10回目のリピーターに対しても同じサービスを提供していますが、そこに差をつけて札幌ファンやリピーターを増やすことができれば、滞在日数の長期化や安定収入にもつながります。

滞在日数を増やすための施策として、札幌市を都市型スノーリゾートとする構想もあります。札幌市は中心部から60分以内にいくつかのスキー場があり、スキーと観光を一度の滞在で楽しめます。この実現には冬の交通機関の情報提供や周遊動態の分析が必要になるのでICTを積極的に活用していきたいと思います。

今後はデータの質や量もさらに精査して最適化し、分析しやすく利用しやすいデータ収集の手法を確立させたいと思っています。これは行政だけではできないのでNTT東日本にもアドバイスをもらいながら進めていきたいです。

また、現在収集している携帯基地局データや動態データは観光以外の分野でも非常に有効だと思います。庁内は縦割りでデータが管理されていますが、異なる分野のデータの組み合わせることで新たな気づきや価値が生まれることもあるはずですから、ゆくゆくは庁内の横のつながりも強化できたらと考えています。

さまざまな分野のデータを検索できる札幌市ICT活用プラットフォーム「DATA-SMART CITY SAPPORO」
観光資源が豊富な札幌。多言語マップや観光案内パンフレットも充実。
(上段左から)札幌市 経済観光局 観光・MICE推進部 観光・MICE推進課 課長 和田 康広氏、札幌市 経済観光局 観光・MICE推進部 観光・MICE推進課 係長 片岡 伯介氏
(下段左から)≪NTT東日本営業担当≫NTT東日本―北海道 ビジネスイノベーション部 カスタマーリレーショングループ 担当課長 竹内 幹朋、NTT東日本―北海道 ビジネスイノベーション部 カスタマーリレーショングループ 菊地 陽子

NTT東日本社内での業務検討の様子(2019年)

*上記ソリューションは2018年11月より単年度契約締結。2019年度、2020年度と3年連続で契約締結。

*文中に記載の組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2020年9月時点(インタビュー時点)のものです。

*上記事例はあくまでも一例であり、すべてのお客さまについて同様の効果があることを保証するものではありません。

札幌市
組織名 札幌市
概要 北海道・石狩平野の南西部に位置する札幌市は、夏はさわやか、冬は積雪寒冷な気候を特徴としており、四季の移り変わりを鮮明に感じることができます。1922年8月1日の市制施行以来、近隣町村との度重なる合併・編入によって、市域を拡大し、1927年には政令指定都市となりました。面積はおよそ1,126平方キロメートル。人口は190万人を超えています。現在10の行政区があり、それぞれ地域の特性を活かした個性あるまちづくりを推進しています。

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